今夜、きみの手に触れさせて



「そうなのっ。ホ、ホテルに行くと思ったの!」


その背中に向けて、言葉を放った。


「あのとき純太くんにホテルに連れていかれると思ったから、ビックリして、悲しくなって、怖くなって、『帰りたい』って泣いたの」


純太くんの足が止まる。


「でも、純太くんはホテルに行くつもりなんかなっかたんだよね? あの日はお兄さんの命日で、あの場所はお兄さんが事故で亡くなった場所だって、小川さんが教えてくれたの」


振り向いた純太くんは黙ってこっちを見て、それから小さくタメ息をついた。


ハッ。こ、こんな話、みんなの前でぶちまけちゃうなんて、わたし無神経だ。




「あの、ゴメンなさい。だけど他にもいっぱい話したいことがあるの。だから、きょ、今日の帰り一緒に帰るの、ダメかな?」


純太くんは何も答えてはくれない。


ただ涼やかな視線だけが、こっちに向けられていた。


でも表情は読めなくて……。


やっぱりもう、わたしのことはイヤになっちゃった?




それでも、気持ちだけは伝えたいよ。


お願い、純太くん……。


『いーよ』って言って。