今夜、きみの手に触れさせて



「月島さん、ちょっと顔貸してくれる?」


突然小川翠さんから声をかけられたのは、その日の昼休み、食事が済んだすぐあとだった。




「え?」


うちの教室に勝手に入ってきて、律ちゃんと並んで座るわたしの肩を掴んで振り向かせ、それだけ告げると、小川さんはもう廊下へと出ていく。


返事も聞かないで。


「あ、あの……」


そうして廊下で立ち止まって、こっちを振り返り……、たぶん、わたしを待ってる。




な、何?


「わたしも行くっ」


律ちゃんが立ちあがり、ついてきてくれたけれど、


「あんたは呼んでないから」


ってピシャリと言われた。




「ひとりじゃ来れないの?」


それからわたしを睨みつける。


「月島さんと、ふたりだけで話したいんだけど」




「あ、うん。行く……よ」


「え、青依?」


青ざめた律ちゃんを「大丈夫だよ」と制して、わたしは小川さんについていった。