今夜、きみの手に触れさせて



「時間だいじょぶ?」


目の前に来た純太くんが、わたしの目を見つめる。


「う、うん」


澄んだ瞳に吸い込まれるように、うなずいてしまった。


まるで催眠術みたいに。




こんな時間に家を出るなんて、我が家ではあり得ないことだって、言いそびれた。


お母さんにウソをついたこと、
早く帰んなきゃ叱られること、

言わなきゃいけないはずなのに……。


そんなこと言うのは、自分だけが子供みたいで恥ずかしかった。




スッと、純太くんの手がわたしの手を取った。


ふんわりと覆うように包み込む。


そうして彼はわたしの手を引き、家とは逆方向へ歩き出した。




いつかも……こんなふうに純太くんに手を引かれて歩いたっけ。


そう、あれは初めて純太くんとしゃべった日だ。




そっと見あげると、街灯の白い光を集めて、純太くんの髪がキラキラと光っていた。