今夜、きみの手に触れさせて



「月島さん」


塾の帰り、自転車置き場で名前を呼ばれた。


あ、藤沢くん。


メガネの奥の優しい目。





「できた? テスト」


「全然!」


力いっぱい即答したら、藤沢くんはクスッと笑った。




「え、月島さん、謙遜かな?」


「じゃなくて、今日のはホントにできなかったの」


「キミがめずらしいね」




並んだ自転車の中から、それぞれ自分のを引っぱり出す。


カチッと鍵を開けると、藤沢くんが言った。


「一緒に帰ろっか」


「え、あ、うん」




月のきれいな静かな夜。


ふたりで自転車を押しながら、並んで歩く夜道。




なんか不思議。


藤沢くんといると穏やかな気持ちになれる。


少し考えてからしゃべる話し方も、落ち着いた雰囲気も、わたしにはしっくりくるのかもしれない。