今夜、きみの手に触れさせて



「出た」


オバケを見たみたいに純太くんはそう言ったけれど、顔はちょっと笑っている。




「う……」


小川さんはその笑顔を見て絶句し、それからうつむいて、パッと両手で顔を覆った。


な、泣いてるの?




『そっかー、矢代って、翠ちゃんの好きな子だ?』
『でもイヤがられてんでしょ? そー聞いたことがある』


後ろの席で御堂さんたちがささやく。




「うっぜ」


純太くんがボソッとつぶやくのが聞こえた。


それでも立ち去らずに、純太くんは小川さんの前で足を止めている。




「だ、だって……純太、フツーに学校来てんだもん」


小川さんが涙声でそう言った。


「あー」


「む、昔みたいに、笑ってんだもん」


「そー」


それから小さくタメ息をつくと、純太くんはこう言ったんだ。




「翠、一緒帰る?」






え……?