今夜、きみの手に触れさせて



「ウソだよ。青依ちゃんは教室にいてくれるだけで、いーから」


そう言い残すと、また前を向いて歩き出す。




純太くん……。




「ブハッ、純太ってば、青依ちゃんにはそ~んな優しいの?」


まともにそう聞いたヤスくんは、純太くんに即蹴りされていた。




「も~、一緒に帰ればいいのに」


横で律ちゃんが口をとがらせる。


「ム、ムリ。恥ずかしいもん」


「たくさんしゃべれて楽しいよ?」


「う……ん」




「それに『わたしが彼女です』って公表できる絶好のチャンスだったのに」


なんて律ちゃんは言った。




そ、それがムリ……。


だってわたしじゃ、みんな納得しないよ。




ふたりっきりだと平気だったくせに、
重ねる手がうれしかったくせに

人の目を気にすると、こんなにも弱虫だ……。




純太くんは平気なの?


わたしが彼女で、本当にいいの?




わたしが、


どんなわたしでも……?