今夜、きみの手に触れさせて



「今もまだ払ってんの? 兄貴の事故の慰謝料」


カレーを食いながら、ポツッとオレは聞いた。


「慰謝料じゃなくて、立て替えてもらった補償金の返済……ね」




幸い、事故の相手となったトラックドライバーのケガは軽傷だったけど、それでも多額の補償金を支払わねばならなかった。


治療費とトラックの修理代とバイクの弁償。




何せ無免許運転だから保険もねーし、兄貴の葬式を出した後のうちの貯えでは、到底払える額ではなかった。


結局、そのほとんどを成宮くんちに立て替えてもらったんだ。


だから母さんは、毎月少しずつ成宮くんの親に金を返している。




「兄貴が運転してたと思ってんの?」


オレがそう聞いたら、カレーを食べる母さんの手が止まった。


「誰にも……わからないことだもん」


まるで自分に言い聞かせるように、そう答える。




ヘルメットをかぶってた方が運転していたのかどうか、

トラックのドライバーも覚えてなくて、兄貴の汚名は晴れないままだった。