肩が触れるほど近くに並んで
同じ歌を聴いて……。
未体験のこの距離感。
人見知りのわたしが、無意識に他人との間に設ける距離を、矢代くんはいつも難なく詰めてくる。
体感的な距離も、心の距離も……。
イヤホンを直すフリをしながら、盗み見るように彼を見あげた。
まつげ長いな……。
キレイな顔だから、黙っていると冷たそうに見えるんだ。
教室やこの部屋でムスッとしていたおっかなげな矢代くんを思い出す。
でも、柔らかに笑う目も、
触れる指先も、
ホントの矢代くんは、とても優しい……。
「あのさー青依ちゃん、修吾のこと、なんて呼んでんの?」
ふいに矢代くんが聞いてきた。
「え、『修吾くん』かな」
「ヤスのことは?」
「『ヤスくん』」
「で、オレは?」
「『矢代……くん』」
「いや、おかしーだろ、それ」
と矢代くんが笑う。



