今夜、きみの手に触れさせて



「あ、わたしできるかも。新しい歌入れられるよ」


わたしがそう言うと、矢代くんはちょっと驚いた顔をした。


「マジで? 友だちに頼んだら、今入ってるのが消えちゃうかもって言われたんだけど」


「大丈夫。今のはそのまま残しておいて、新しいファイルを作って、それを同期させるの。

前に家のパソコンがこわれて買い替えたときに、ネットで調べながらやったことがある」




「へぇ~」


「2,3日貸してもらえたら、やってみるけど? 矢代くんはどんな歌が好き? レンタルしてきて入れてあげる」


矢代くんのために何かできることがうれしくて、はりきって宣言した。




「ホントに?」


「うん!」


「じゃー青依ちゃんが聴いてるやつ入れてよ。オレ、歌、あんま知らねーし」


矢代くんが、当たり前のようにそう言うから、
なんだか……心がふわふわしてくる。


ずっと前からの仲良しみたいなんだもん。