今夜、きみの手に触れさせて



矢代くんはなんの迷いもなくいつもの窓際に腰を下ろしたけれど、私はボーッと突っ立ったまんま。


だって……恥ずかしくて、どこに座ったらいいのかわからない。




「聴く?」


そんな私を見あげて、矢代くんが聞いた。


手にしたメタルブル-のipodをチラリと見せながら。




「う、うん」


ぎくしゃくと充電が切れかけたロボットみたいになって、矢代くんの並びにペタンと座る。




「デッキとかスピーカーとか、ねーからさ」


そう言いながら、彼はこっちを向いた。


ドキ……。




「え、遠いんだけど」


真顔だった矢代くんの表情がふわっと和らぐ。


ひとつのイヤホンを片耳ずつ使って聴くわけだから、あんまり遠いとコードが届かないのに、


距離を置いてひょこんと座っているわたしが、おかしかったみたい。




いや、これでも精一杯近づいたつもりだったんだけど。