今夜、きみの手に触れさせて



「可愛ーつってたよ、青依ちゃんのこと」


「うそ」


「つきあってねーよって言ったらガッカリしてた」


と矢代くんは続けた。




『つきあってねーよ』……か。


あの頃はまだ、こんなじゃなかったけど、
今は……どうなんだろう、わたしたち。


矢代くんが始めようとしてくれているのは、どーゆー関係?




ピ。


と電子音がしたので顔をあげると、矢代くんがエアコンのスイッチを入れたところだった。


「朝から暑すぎな」


マグカップをテーブルに置いたまま彼は立ちあがり、間続きのリビングへと移動する。


「こっちのが涼しいから、青依ちゃんもおいで」


そうして彼はクーラーの冷気を閉じ込めるべく、キッチンとの間の引き戸を閉めた。




部屋の隅には布団がきちんとたたまれて重ねてある。


いつもならもっと散乱しているマンガの本も、本棚の前に詰まれていた。