今夜、きみの手に触れさせて



「矢代くんのおうちも、そう?」


「んー、オレの場合、修吾な」


「え?」


「『わかってる』っつってんのに、いつまでもしつこく説教してくんだよ、あいつ。

『そんなんじゃダメだ』とかなんとか。マ~ジうぜーし」




「ふふ、お母さんみたい」


思わず笑ったら、矢代くんも「ハハッ」て笑った。




「本物のお母さんは? どんな人?」


「え」


何気なく聞いた言葉に、一瞬、彼の動きが止まる。




「さー、あんまわかんねー」


口元に運んだマグに口をつけないまま、矢代くんはそれをテーブルに置いた。




「美人だよね、矢代くんのお母さん」


そう言うと、彼は少し驚いた顔をする。


「あれ? 会ったことあるんだっけ?」


「前にケンカ騒ぎのとき、ここで律ちゃんと電話を待っていて……。そのとき、お母さんが帰って来たから」




「あー、なんかそんなこと言ってたっけ、うちの親」


思い出したように矢代くんは言った。