今夜、きみの手に触れさせて



「青依ちゃん、泣いた?」


突然、矢代くんにそう聞かれた。




「え、泣いてないよ?」


「なんかそんな顔してる」


矢代くんの目線は、わたしの顔にとまったまま動かない。




な、なんで……わかるのかな?


まぶたは腫れてないか、鼻は赤くないか、
家を出る前に、鏡でちゃんとチェックしてきたのに……。




「ちょっと、お母さんとケンカしちゃって……」


「なんで?」


少し首を傾げて矢代くんは聞いた。




「えっと……、勉強のことばっかうるさく言うから」


「そっか」


「がんばってもがんばっても、勉強しろって言われる」


それはホントのことだ。


今日に限らず、小さな頃からずっと。




「わかってんのに言われるとムカつくんだよな」


矢代くんが同調してくれたから、うれしかった。