今夜、きみの手に触れさせて



「サンキュ。オレ、リクエストしちゃったもんな」


「ううん。後でおやつにしようね」


そう言ったら、矢代くんはプスッと笑った。




「それ、3歳児に言う言い方」


「え、そうかな?」


「ガキだと思ってるっしょ、オレのこと」


「思ってないよ、思ってないよ」


「2回言うとこが怪しー」


なーんて、ちょっとスネたような口調になるけど、彼の顔は涼やかなまま。


ガキだなんてちっとも思えなくて、むしろ大人っぽい視線にドキドキしていた。




「コーヒー?」


「え」


「インスタントだよ」


まさかの、矢代くんにコーヒーをいれてもらう。


キッチンに立つ彼の後ろ姿……。




コトッとテーブルに不ぞろいなマグカップを2つ置き、矢代くんはわたしの向かいの席に座った。


澄んだ目がこっちに向けられるだけで、緊張して体が固まる。




この部屋に、今、ふたりきり……。


この前みたいな偶然ではなく、ふたりで約束して、こうして会っている。