「座って」
勧められるままにキッチンの椅子につくと、矢代くんはテーブルの上に置かれた食器を片づけだす。
朝ごはんを食べ終わったとこみたい。
「あ、あの、わたし、洗おっか?」
「いーよ」
「ケガは? 大丈夫?」
「ろっ骨にヒビ」
手慣れた手つきで食器を洗いながら、矢代くんはケガの状況を説明してくれた。
「あの、これ、お見舞い」
コトンと、テーブルにペーパーバッグを置く。
中身はそう、レモンボール。
「あ、おいしーやつだ」
手を拭きながら戻ってきて、矢代くんはペーパーバッグをのぞき込んだ。
パクッと1個、口に運ぶ。
「うまっ」
そう言って矢代くんは、また笑ってくれた。
それだけでお母さんに怒られたことなんか、どっかに吹っ飛ぶ。



