今夜、きみの手に触れさせて



そうして、午前10時――。


思いのほか早く矢代くんのアパートについてしまった。




あのまま泣きながらドーナツを作って、お母さんが作った朝食を食べて、ゆっくり身支度をして家を出たんだ。


ホントはもっとゆっくり、シャンプーとかしたかったんだけど、お母さんの目が光っているからやめにした。


うちはひとりっ子だから、お母さんの監視の目は、いつもわたしに注がれている。


『まさか、男の子?』


なんて、鋭い指摘にドキッとしたもん。




気まずいし、いつまでも家にいて、お母さんの気が変わったらヤダから出てきちゃった。


『外出禁止!』なんて言い出しかねないし……。




過保護で過干渉。

ほんとイヤんなる。





でも、10時か……。


時間の約束はしてないけれど、どう考えても早いよね。


きっと午後からだと思ってるだろうな、矢代くん。




はりきり過ぎて恥ずかしいけど、やっぱり会いたい。


思いを決めて階段をのぼった。