今夜、きみの手に触れさせて



「勉強ならやってるもん。この夏休み、昼も夜もどんだけ塾に行ってたか、お母さん知ってるでしょ?」


昨夜、ドーナツの生地を作っているときも、お母さんはすごくイヤな顔をした。


『友だちと遊ぶ』って言ったら、あきれたように言われたし。


『受験生でしょ、そんなことしているヒマがあるの?』って。


悔しかったけど、昨夜はどうしても生地を作っておきたかったから、ガマンして聞き流したんだ。


口答えすると長くなるから。


でも……。




「がんばってるのは青依だけじゃないからね」


今、目の前のお母さんが言った。


「ここで気を抜いたら負けよ」




「負けって、何に負けるの?」


思わず聞き返す。


「同じトップ校を狙う子たちにでしょ」




「いつわたしがトップ校狙うって言った?」


決めつけられてカチンとくる。




「あら、行きたいんでしょ?『一校』。
塾の面談で言ってたじゃない」


そんなわたしに、お母さんは平然とそう言った。