今夜、きみの手に触れさせて



そして日曜日――。


早朝からひとりでこっそり起き出して、ドーナツ作りを始める。


誰もいないキッチン。


揚げ物用の鍋に油を入れて、カチッとガスコンロのつまみを回した。


実は、生地は昨夜のうちに作っていて、もう冷蔵庫に寝かせてある。


油が熱くなったら、それをスプーンですくって、この中へ落としていくんだ。


レモン味のドーナツ、レモンボール。


矢代くんが気に入ってくれた味。




「ちょっと青依。朝っぱらから何やってんのよ?」



朝ごはんを作るお母さんとかぶらないように早起きしたのに、

物音を聞きつけたのか、お母さんはいつもより1時間も早く起きてきた。




「昨夜説明したよ。今日は友だちと遊ぶって。ドーナツ作って持ってくって」


「お母さんも昨夜言ったわよね? そんなことするヒマがあるの?って」


受験生でしょ、と決まり文句が続いた。




ここ数カ月言われ続けてきた言葉。


今だって、それを言うためにわざわざ起きてきたんだ。きっと。