そして――
あんなに優しいキスをしておきながら、
『愛してるよ』なんて言っておきながら、
彼からの連絡は何もない。
彼氏じゃないんだし、告白されたわけでもないんだから。
つまりこの放置は、このまま一生続くかもしれないんだ……。
時間が経つほどに、ネガティブな気持ちが増してくる。
1回限りの偶然のキス。
それでも恨んだらダメだよね。
だってあのキスは、強引にされたわけじゃなくて、拒まなかったわたしが選んだことだから。
初めてのキスが、矢代くんとでよかった。
キスが……上手な人が相手でよかった。
大好きな人とで、よかった。
そう思おう。
なんて、自分をなぐさめにかかる。
「……きしま。月島? おい、……月島っ」
え?
「あ……、は、はいっ」
気がつくと目の前に塾の数学の先生が立っていた。