今夜、きみの手に触れさせて



小川さんはいきなりすっくと立ちあがり、ズンズンとこっちに向かって歩いて来る。


何か言われると思って身構えていたけれど、彼女はわたしをスルーして、もっと奥にいる友だちの胸に飛び込んだ。



「「翠、大丈夫?」」


「う……え……っ」


その胸の中で小川さんは泣いているんだ……。




「純太、最低」


目の前でヒナちゃんがつぶやくと、小川さんの元へと飛んで行った。


きっと友だちなんだよね。




あまりの展開に唖然として小川さんの様子を見守っていると、彼女の周りの女の子たちに思いっきり睨まれた。


「誰、あれ。ダッサ」
「調子に乗ってんなよ」


とか聞こえる。


ドクドクと、心臓がイヤな音を立てていた。




「大丈夫だよ。青依のせいじゃないもん」


律ちゃんが手を握ってくれた。


「ったく、純太は無責任なんだから」


翔子ちゃんは肩をすくめてる。


「まぁ、あの翠って子も、今まで純太にかなりしつこくつきまとってたからさ……」


そう言うと翔子ちゃんは小さなため息をついた。