「汗、拭くね」
視線を感じて恥ずかしかったけど、前置きだけして、彼の汗をそっと拭う。
それから、おしぼりを裏返してたたみ、切れた唇の端についた血を拭き取った。
「テ」
矢代くんは一瞬痛そうに顔を歪めたけれど、おとなしく、されるままになっている。
続いて頬の汗やホコリを拭いていると、
突然、彼の手がわたしの手首を掴んだ。
え?
「い、痛かった?」
そう聞いたわたしの目をじっと見つめたまま、矢代くんは微かに首を横に振る。
月灯りに青白く照らし出される彼の顔。
遠慮のない眼差し――。
「あ、あの……?」
矢代くんが、掴んだ手首をグイと引いた。
その反動で前にのめって、わたしは彼の胸に倒れ込む。
「キャッ」
とっさに壁に手をついて、体重がかからないようにセーブしたけど、
それでも矢代くんは痛そうに「うっ」と呻いた。



