今夜、きみの手に触れさせて



「テンポとか、いる?」


「いるよ」


そこに、どんだけ劣等感を抱いているか。


みんなみたいにポンポンと、楽しく会話したいのに……。




「ひと言ずつ、ちゃんと受け止めてもらってる気がして、オレは好きだけどな、青依ちゃんの話し方。

言葉に詰まってるとことか、すげー可愛い」


矢代くんの顔がフワッとまたほどけた。




か、可愛い?


そ、それ、変わってるよ、矢代くん。


それともやっぱりからかわれてんのかな?




「だから……今のままでいて」




つぶやくような声に、聞き違いかと思って視線をあげると、矢代くんはもう前を向き、手のひらを胸に当てて目をつぶっていた。




傷が痛むのかもしれない。


ムリしてしゃべってくれてるんだよね……。


目を閉じた矢代くんの額には汗が滲んでいた。




「しゅ、修吾くん、遅いね」


「来るよ、あいつ」


「でも、もう一度電話した方がいいんじゃない?」


「や、大丈夫」



矢代くんは目を閉じたままそう言い切った。