今夜、きみの手に触れさせて



「何か、イヤな思いでも……した?」


伏せたまつげに目を奪われながら、そんなふうに思った。


だって矢代くんの横顔は、とってもさびしそうだったから。




「ん~、しそうで……怖かった」


しばらく黙っていたあとで、やっぱりポツリと矢代くんは言った。




「おっちゃんもおばちゃんもいい人だから、ヤな思いなんてするわけねーのにな。

いつも修吾とオレを分け隔てなく、まるで自分の息子みたいに扱ってくれてたよ」


「そう……」


「問題はこっちだよな。修吾のこと、やっぱ羨ましかった……。

それに……オレにはオレの親がいるわけじゃん。

オレの親もオレに似て弱虫だからさ、いつまでも無邪気に修吾のところで甘えてらんねーし」


フー、と矢代くんは息をつく。




「自分が壊れちまいそうで……怖かったんだ」




最後はひとり言みたいにつぶやいて、矢代くんは月を見あげた。






「青依ちゃんって不思議だね……。オレ、初めてこんなこと、人に話した」