今夜、きみの手に触れさせて



「ねーねー純太、来月の花火大会一緒に行こっ! 今から予約!」


矢代くんは身動きひとつせずに、マンガを読み続けている。




「ねー、行こーよ、純太。いつもコンビニぐらいしか外へ出てないんでしょ? ねっ、行こう?」


熱心な誘いにも矢代くんは動じない。


マンガに目線を落としたまま、


「イヤ」とひとこと呟いた。




「イヤって……。キツイよ、純太」


小川さんはしょんぼりと肩を落とす。




それでもすぐに気を取り直して、また矢代くんの顔を覗き込んだ。




「じゃあ、夏祭りは一緒に行こうね!」

「イヤ」



「みんなで海は?」

「イヤ」



「じゃあキャンプ!」

「イヤ」




「もぉ! わたしは純太のこと思って言ってんだよ? ずうっとそうやって引きこもってるつもり?」