今夜、きみの手に触れさせて



矢代くんのおうち、お母さんと二人暮らしだっけ……。


一度だけごあいさつしたことがある。


痩せていて、色が白くて、とってもキレイな矢代くんのお母さん……。




ケータイ代なんて親が払うのが当たり前になっていて、わたしきっと今、無神経なことを言った。


自分の世界の狭さに、泣きたくなる。






「だからオレさぁ、なんでも修吾に言うことにしてんの」


なのに矢代くんの口調は、ちっとも変わらなかった。




「ケータイなくても、修吾の電話番号だけ覚えとけば事足りるんだよ。みんなの番号いちいち覚えなくて済むしさ」


ん? どーゆー意味……?


「『ヤスにジャンプ買ったか聞いといて』とか、
『リューにゲームの続き、今からやるぞっつって』とか。

全部修吾に言うんだ。かなり便利よ?」



えっへ……?