「矢代くんのおうちも厳しいんだね」
「へ?」
「ケータイ持ってないんでしょ? うちもなかなか買ってもらえなかったんだよ、勉強しなくなるからダメって。
だから成績下がったら、親に取りあげられちゃうかも……。横暴だよね、そんなの」
わたしが憤慨して言うと、
「そーゆー発想かぁ」
と、矢代くんの顔がフワッと和らいだ。
「オレは卒業してからかな、ケータイは。
金かかるし」
「…………」
やだ、わたし。
わたしのまわりでケータイを持ってない子はもうほとんどいなくて、
たまーにいるのは『勉強の妨げになるから受験が済んでから』って親に言われている子だけで……。
だから想像できなかったんだ。
バカにならないケータイ代。
家計的にそれが大変な家だってある。
親に負担をかけたくない人だっている。



