今夜、きみの手に触れさせて



「そっか……。でも、矢代くんがこんなケガしてるって知ったら、お母さんきっと泣いちゃうね」


真面目にそう言ったのに、矢代くんはフッと小さく、目だけで笑う。




「青依ちゃんが泣いてくれたから、いーよ、オレ」




ときどき子どもっぽい言い方をするのが、矢代くんの特徴……。




とぎれとぎれに話すわたしたちを、細い月が照らしていた。


静かで柔らかな月の光……。


月灯りの下で見る彼は、青白く儚げに見えた。






「オレね、ケータイ持ってねーの」


不意に明るく矢代くんが言った。


「忘れたんじゃなくて元々ねーから、今夜は青依ちゃんが気づいてくれて、マジ助かったよ」


なんて言ってくれる。