今夜、きみの手に触れさせて




ヤスくんを見あげて固まっていた矢代くんは、


「ウゼ」


と、ひと言だけ吐き捨てた。


そしてそのまま視線をわたしに戻すことはなく、手にしたマンガをまた読み始める。




えっ、それだけ?


そ、そーだよね。興味ないよね……。




矢代くんの薄~い反応に傷つきつつ、わたしは元の場所へ逃げるように戻った。


ちょうど律ちゃんがコーラの入ったコップを持って来てくれたところで


「矢代くん紹介のこと知らなかったんだね」って言った。


最後のほうの会話が律ちゃんにも聞こえていたみたい。




「うん」


で、でもいいんだ。


もともと断られるつもりで来たんだもん。


任務は果たしたし、あとは帰るだけ。


そ、そうそう。平気平気。うんうん……。




でもヒナちゃんたちには、わたしが矢代くんに振られて哀れに見えたみたいだった。