今夜、きみの手に触れさせて



それから1週間ほど経った晩のこと――


オレはひとりで夜道を歩いていた。


母親は夜勤だから、晩飯は適当に済ませたんだけど、遅くなってから腹が空いた。


コンビニのコロッケでも買おうと思って、表へ出て歩いてるところ。


空を見あげると細い月が輝いていた。




オレが歩くと月もついてくる。


オレが止まると月も止まり、


曲がり角を曲がっても、月はやっぱりついてきた。


ガキの頃はそんなことが、すげー不思議だったっけ。


謎が解明されたわけじゃないけど、今はそんなことは気にもならない。


月がついてきてるかなんて、確かめたりはしない。




「おい」


人通りのない道に差しかかったとき、不意に低い声がした。




オレを呼んだのか、
誰の声なのか、


確かめる前に、ガツッと顔面に衝撃が走った。


地面にズサッと叩きつけられる。




何が起こったのかわからない。