今夜、きみの手に触れさせて



「真面目だなー、孝也は」


「じゃなくて、振られるのが怖いだけだよ」


「バーカ。お前は振られねーから安心しろ」




優しくて、誠実で、頭のいい努力家。


顔だってなかなかのイケメンだ。


そんな孝也の良さをわからないよ―な女がいたら、そいつはただのバカだ。




「浴衣姿、見たかったな」


なんて、イケメンくんはまだ残念がっている。




「確かに……。ちょっといーかも。浴衣」


ボソッとオレがつぶやくと、ギョッとした顔でこっちを見た。




「えっ、純太、そういう子いるの?」


「い……ねーし」


否定してんのに、孝也の目がどんどんニヤケてくる。




「いや、修吾が紹介するとか言ってたくせに、いまだに紹介されてない子がいてさ。

きっと向こうに断られたんだろーけど……。

いや、オレも断ったっけ?」


なんか、言い訳みたいになる。




「気になるんだ?」


「……いや、全然」


そう答えたら、孝也が「プッ」と吹き出した。




「別に、気になんねーから」


強めに言い直すと、もっと笑われた。