「お兄ちゃん、シロップかけ過ぎ!」
「えっ、あっ、うわっ」
客のガキの声に手元を見ると、手にしたカップから、かけ過ぎたイチゴ味のシロップがポタポタとこぼれていた。
「オラ、特製だ」
カップを拭いて、ドバドバと氷を足して渡してやると、ガキはそれを受け取りながら、冷静に言った。
「彼女のこと、考え過ぎなんじゃない?」
「あ?」
「さっきの浴衣の人、そうでしょ?」
いっちょ前に、ニヤニヤとからかってくる。
ハン、ませガキめ。
無言でギロッと睨みつけて、大人の対応をしてやると、ガキは若干青ざめて、すごすごと帰って行った。
「どした、純太?」
そのとき背後から戸惑った声がかかった。
「おー、孝也」
振り向くと、藤沢孝也。オレの幼馴染みがいた。
持ち場を離れていた孝也が、戻ってきたところだ。