「あ、あの、ありがとう……」
手を伸ばしてカップを受け取るとき、矢代くんの指に、指先が触れた。
冷た……。
ずっと氷を触ってるんだもん。
矢代くんの指は氷みたいに冷たかったよ。
「あ、あの、お金」
払おうとすると、矢代くんは
「いーよ、出しとく」なんて言う。
「で、で、でも」
噛みっぱなしのわたしをチラッと見て、でも矢代クンの体はもう次のかき氷を作り始めていた。
「イチゴ!」
「こっち、メロン、メロン」
周りで小学生たちが注文を連呼している。
……邪魔しちゃダメだもんね。
もう一度ペコンとお辞儀をして、律ちゃんの元へと向かった。
両手には発泡スチロールのカップ。
中身は矢代くんの作ったかき氷。
それは氷イチゴじゃなく、
わたしの浴衣と髪飾りの色と同じ、
ブルーハワイとレモンだった。



