今夜、きみの手に触れさせて



振り返ってキョロキョロしても、知り合いなんてどこにもいない。




「青依ちゃん、こっち」


もう一度、そう呼んだのは……


矢代くんの声だった。




え、わたしの名前……?


し、し、し、知ってくれてるの?




振り向いたままの姿勢でボーッと突っ立ってたら、長テーブルの向こうから、矢代くんがクイクイと手招きをした。


『おいで、おいで』ってしてくれている。




人混みをかき分けて戻ると、矢代くんは出来たてのかき氷のカップを2つ、わたしの目の前に突き出した。



「持ってきな」


スラッとそう言う矢代くん。


「え……」



「修吾の彼女と一緒?」


「あ、うん」


だから2つあるんだ。