今夜、きみの手に触れさせて



と、そのとき――


小学生の軍団が押し寄せきて、大きく列が乱れた。


「キャッ」




「こら、お前らちゃんと並べっ」


大人に叱られて、小学生たちはバツが悪そうに列の後ろへと去っていく。




あっ!


えっ?


気がつくとわたしは、なんと彼らに押されたせいで、矢代くんではなく別のスタッフの前に流されていた。


ウ、ウソ……。




「何味にします?」


呆然とするわたしに、そのスタッフは聞いた。




ち、ちがう。あなたじゃない……!


バッと振り向くと、矢代くんはもう別の人の注文を聞いている。


「何個ですか?」


もう一度そう聞いたスタッフは、たぶん同じ中三生だ。


顔だけ知ってる子。




「や、やっぱり、いいです……っ」


わたしはその子にそう言い捨てると、身を翻した。