今夜、きみの手に触れさせて



ヤスは……


何でもわかるみたいだ。




もしかして、オレよりもオレの気持ちがわかるのかもしれない。


うちの兄貴の件も、誰かに聞いて知ってんのかもな……。




窓辺に行き、床に座って空を見あげる。


立っていると、足元からグラッと世界が変わってしまうようで怖かった。




変わるはずのない確かなものが、目の前で崩れていく感覚。


大切なものがあっけなく消え失せても、
何も気づかずに世の中は流れていくから――。








オレ、知らなかったんだよな。


自分はただダルいから、こーなってると思ってた。


テンションあがらねーし、面倒なことをよけて生きているつもりでいた。




だけど、そーじゃなくて、

たぶんオレには無理なんだ。



すげー悲しいことや、
すげー苦しいことが、

フツーに起こるこの世の中が。




だから勝手にスイッチを切って、放り投げた。