今夜、きみの手に触れさせて



あのあと、あの子はそれを自分で片づけたんだろうか……?


恥ずかしそうにペーパーバッグを差し出したあの子の真っ赤な顔が蘇った。



「あ」



キョロキョロ探してたら、テーブルの足元にあのドーナツが1個転がってるのを発見する。


拾ってパパッと手で払い、パクッとそれを口に入れた。


うん。


ほのかな甘みが口いっぱいに広がる。




「うま」


やっぱうまいや、これ。




「あら純太、お腹すいてるの?」


不意に母親の声がした。


「え?」


「今、落ちてるもの食べなかった?」


なんて聞かれる。




「……食ってねーし」


「そう? すぐご飯にするからね」


「いや、飯食ってきたから、いらねー」



オレがそう告げると、母親は少し残念そうな声を出した。