「あ、あの、ホントに可愛いね、その髪飾り」
話題を探せなくて、あわててそう言ったら、は?って顔された。
フン、て鼻で笑われた気もする。
今更だよね。終わった話をわざわざもう一度振られても、なんなのって感じ……。
「おい、ヤス。次の巻」
そのとき突然、声が飛んできた。
矢代くんだ。
「お前、読むの早すぎ。続きは今オレが読んでるから待っとけ」
わたしたちのすぐ横のグループから『ヤス』という人が答えた。
ああ、この人知ってる。
たぶん隣のクラスの子で、しょっちゅううちの教室に来ては北見くんたちとしゃべってるチャラい感じの人だ。
「先貸せよ。お前おせーから」
ダルそうな矢代くんの声――。
チラッと見ると、矢代くんはもう起きあがっていて、壁にもたれて座り、足を投げ出していた。
自分から取りに来る様子などまったくなし。



