今夜、きみの手に触れさせて



信号が赤になり、オレらは並んで停まった。


この横断歩道を渡れば、ヤスとは方向が別々になる。




「純太……。みんなお前のこと好きだぜ」




ヤスはこっちは見ずに、赤信号に向かってそんなことを言った。



「バーカ」


「あはは」




信号が変わり、チャリを並べて横断歩道を渡る。




「じゃな」


「おう」




なぜか、一瞬――


そう笑ったヤスの顔が、ヤスの背中が、遠ざかるのが恐くなった。




「ヤ、ヤス……!」


「え?」


ヤスが自転車を停めて振り返る。




「何?」


「いや、気をつけて帰れよ、……車、とか」


キョトンと、ヤスがオレを見た。




「おう。純太もな」


それからヤスはそう言って、にっこりと笑う。



「うん……」