今夜、きみの手に触れさせて



「けどな、オレは他にもうれしいことがあったんだぜ」


それからヤスはそう言った。


「何が?」


「打ち上げのとき、純太がめっちゃ笑ってた!」


「なんだ、それ?」




ヤスはペダルを漕ぎながら大声で続ける。


「修吾がいつも言うんだよなぁ。『純太は、みんなの真ん中で笑ってるのが一番似合うんだ』って……。

『あいつが笑うと、パッと花が咲いたように周りが明るくなるんだぞ』ってさ」



「ハハ、相変わらずキモいこと言ってんのな、修吾は」




「オレはお前とは中学からだから、ダルそうな純太しか知らねーし、よくわかんなかったんだけど……。

今日は修吾の言ってる意味がわかったよ。みんなの中心で純太が笑ってると、オレ、スゲーうれしかったもん」



「からかうなよ」