今夜、きみの手に触れさせて



「バカだな、あいつ。ここは、抱きしめてキス、だろ」


突っ立ったままの修吾に呆れて、オレはそうつぶやいた。




「純太は手が早過ぎるんだよ」


ヤスがクスクス笑う。


「つきあう前からキスしちゃうんだもんな?」


「してねーし」




まぁ、そんなこんなで、無事一件落着。


修吾はまだ彼女とゆっくり話すっつーから、オレとヤスは先に帰ることにした。






帰り道――


「今日さ、みんなうれしそうだったよなー」


チャリを並べて走りながら、自分こそ嬉しそうにヤスが言った。




「修吾のことが誇らしいんだろ。あんな劣勢跳ね返して勝っちまうんだから」


オレはそう答える。


「だな。みんなやたら興奮しててさ、いつもとはちょっと違ってた」


「うん」




自転車は夜道を滑る。


暗闇に街灯の白い光がキレイだった。