今夜、きみの手に触れさせて



「修吾、ちょっと来い」


チャイムを鳴らす前に、ヤスが修吾を呼び止めた。




「お前、前髪おろしとけ」


いつも上にあげている修吾の前髪をおろして、ヤスは手ぐしで乱暴に整えていく。


案外長かった修吾の前髪が、いい感じで瞼にかかり、おどろおどろしい顔をちょっとだけカモフラする。




「このほうがマシだろ?」とヤス。


「あー……、若干な」とオレ。




修吾がチャイムを押すと同時に、ヤスとオレは斜め向かいの家まではけて、遠巻きに見守った。




修吾の彼女はすぐに出てきて、修吾を見あげる。


手を伸ばして、修吾の額にかかった髪をそっとあげ、彼女はあの悲惨な顔をまじまじと見つめた。


それから自分の目からこぼれ落ちる涙を何度も拭いて……


そうして修吾を見て、笑った。




「いーなー。いい彼女じゃん」


ヤスがうらやましげに言う。