だけど――
そんなことなど、どうでもよくなってしまう言葉を、ヤスくんは叫んだんだ。
「修吾が北中のやつらに拉致られたぞっ」
え……?
「隣町の神社だ。竜一に電話したから、もう何人か向かってると思うけど、相手は大勢いるみたいなんだ」
それで矢代くんを呼びに……。
「り、律ちゃんはっ?」
わたしは思わず叫ぶ。
「あの子が知らせてくれたんだ。てか、今、下にいるから、詳しいことは律ちゃんから聞いて」
わたしに答えるヤスくんを待たずに、矢代くんはもう部屋を飛び出していった。
ヤスくんがそれに続く。
わたしも外に出て、階段を駆け下りた。
「律ちゃんっ!」
コンクリートの上に律ちゃんがうずくまっている。
「青依~」
「ケ、ケガはないの?」
うなずく律ちゃんを、ひざをついて抱きしめた。



