今夜、きみの手に触れさせて



ひとりでパニクってると、


突然、両側からムニュッと、ほっぺをはさまれた。


ウ、ウソ……。




大きくて冷やっこい矢代くんの両手。




「赤いと、やっぱ熱いんだな」


なんてつぶやいた。


お……温度を確かめてる、の?


か、体中が、ありえないほど熱くなる。






そのとき――




玄関のドアが開く音がして、


誰かが大声で叫びながら入ってきた。




「純太っ、いるかっ?」


ガタガタとテーブルやいすにぶち当たりながら、ヤスくんがすごくあわてて向かってくる。




尋常じゃない様子。

だって、クツのままだし。




ヤスくんは、矢代くんの前に突っ立ってるわたしを、はねのけるようにして彼の腕を掴んだ。


「キャッ」


はじき飛ばされた拍子に、わたしは持っていたペーパーバッグを放り出す。




あっ!


床に散らばるレモンボール。




そ、そんな……っ。


一生懸命作ったレモンボールが、床一面にコロコロと転がっていった。