矢代くんって……やっぱり謎だ。
いつもは何にも聞いてないふうで、何に対してもまるで無関心なのに、
急に優しかったり、
急に懐っこかったりする……。
名前も知らないのに手をひいてくれたり、
ドーナツを口に入れてくれたりする。
「砂糖、」
それから、矢代くんはちょんちょんと自分の唇を指さした。
わたしの口元に砂糖がついてることを教えてくれたみたい。
でも今、ペーパーバッグを抱えてるから拭けなくて……。
モタモタしてたら、
矢代くんの指先がスッと、わたしの唇をかすめていった。
ドキ……。
指についた砂糖を、矢代くんはペロッと舐める。
ほっ、ほらっ、こーゆー感じ……!



