今夜、きみの手に触れさせて



放課後――。


学校から少し歩いたところにある小さなアパート。


キュ、キュ、キュ、と鉄製の階段をのぼっていくと、そこに矢代くんちはあった。




「ここだよ」


律ちゃんが目配せしてドアを開ける。


鍵はかかってないのか、チャイムも押さないで当たり前みたいに入っていく。


「お、おじゃましま……」


おわ、玄関には所せましとスニーカーがいっぱい溢れ返っていた。




玄関をあがるとすぐ見渡せるリビングには、男女数名がすでに集まっている。


そのほとんどが同じ中学の子たちだった。


集まってるといっても、それぞれバラバラに固まって床に座り、しゃべったり、ケータイいじったりしてるだけ。




う、これは……俗にいう『不良の溜まり場』ってやつですか?




「「律~!」」

「ヒナ、翔子ちゃん!」


律ちゃんに手を振る二人組の少女たちの元へ行き、取りあえずわたしたちも腰を下ろした。