今夜、きみの手に触れさせて



全身“オレに構うな”オーラに包まれてたから、わたしだけじゃなくて、普通の子はみんな彼に話しかけたりはしなかった。


『実はキレたら、矢代が一番ヤバいらしいよ』なんて、もっともらしく囁かれてたし……。


そんな矢代くんの目に、わたしが映ることなんて、一切なかったはずなんだ。






「なんか、怖いんだけど……」


わたしは思わず律ちゃんに言った。


そんな人紹介されてもしゃべれる気がしない。


「ム、ムリだよ」


「だよね~。断っとく?」


と律ちゃんは優しく笑ってくれた。




「北見くんってば、『1回でいいから会うだけ会ってから断って』なんて言ってたけど、青依抵抗あるよね?」


「う……ん」




えっと……悪いかな?


矢代くんにでも北見くんにでもなく、律ちゃんに悪いかなって、そう思った。


北見くんの頼みなら、きっときいてあげたいはずだから。