オリーブの首飾り(2)

春子は下井川であった親子連れの女の子が、正一の心臓の移植相手だと言いだした。

「何故、そんな事が分かる?馬鹿な事を言うな!」

「間違いないわ!絶対あの子よ!」


春子は、「あれ以来」毎日下井川に行き、「あの親子」を捜していた。


そして12日目。
遂に出会った。

春子は話しかけた。
親子は春子の事を覚えていた。
「そこの休憩所で、休みませんか?」


春子は親子連れと話しをしている内に、お互い名乗り合い、娘の名前が咲子だと知った。

花山咲子。
18歳、女子高校生。
病気で休学中、と言う。
意外に近くに住んでいた。

「ねえ、咲子ちゃん。その首飾り何処で買ったの?それに付いてるの何の花?」

咲子の胸元のネックレスの先には花の形の飾りが付いていた。

花の飾りの横には親指大の丸い実の形をした飾りも付いている。

「これ?何の花か分からないけど………」

咲子は胸元の首飾りを手に握り、
「これは大事な人から貰ったの。私に自分の命を………」

「咲子!」
咲子の母親が止めた。
「そろそろ、帰りましょう」

春子と親子は再開を約し別れた。

春子は三人を見送りながら、咲子の後ろ姿をいつ迄も見ていた。

咲子の後ろ姿に向かって、
「その花はね………その花はオリーブの花なのよ」
そう言いたかった。


間違いなかった。
最初に見た時はまさか!、と思っ
たが近くで見て確信した。

自分がデザインして作らせた物だった。

それを正一が欲しがったのであげたのだった。
見間違う訳がなかった。

正一がドナー登録をした時に言った言葉があった。

「僕の心臓を誰かにあげる事になったら、このオリーブの首飾りも貰ってくれる事を条件にするから」

その時は、
「僕を見つけてよ」
正一は笑いながらそう言っていた。

春子はオリーブの首飾りを遺品として受け取るより、正一の意思を尊重した。

「正一が会いに来た。正一が会いに来てくれた」

春子は息子、正一が会いに来てくれた。
そう信じた。
「見つけたわよ正一!母さんあなたを見つけたわよ!」

春子は咲子の後ろ姿を見ながら、何度も何度も口にした。