美久の体を手早く拭いてパジャマを着せると、ワイシャツに付いたキスマークを洗面所で洗い流した。


なかなか落ちてくれなくて、涙がポロッとこぼれ落ちる。


泣かない。


泣いちゃダメ。


そう思って腕でゴシゴシ涙を拭う。



ようやく落ちた頃には涙は止まっていたけど、心にずっしり重い影が出来ていた。



聞きたいけど、聞けない。


確かめるのが怖い。


太一に裏切られた時のことが蘇って、胸がキリキリ痛み出した。



「ママー?りくが上がったよー?」



「えっ?あ、うん……」



ヤバい、またぼんやりしちゃってた。



「考え事?」



お風呂上がりのリュウは、いつも通り上半身裸でリビングにやって来る。


ツヤのある肌は引き締まっていて、かなりの色気を放出している。


いつ見てもドキッとするけど、今日はなんだか泣きたくなった。


スーツを着ても良く似合うし、ぶっちゃけモテるのもムリはない。


だけど……浮気だなんて。


今までまったく心配はしていなかったけど、ここに来てそんな心配の種が出て来るなんて。