『星璃。とうとうね。おめでとう。お母さんはねぇ…ずっとこの日を夢見ていたのよ』
私の目の前で大泣きする母に呆然とする私。
さかのぼること30分前────
優馬が帰ろうと階段を降りてる時、うちの母親と鉢合わせしたのだ。
おかしいな…。
夜まで帰ってこないはずだったのに。
「あらぁ~。優馬くんじゃない!!」
こんな日に限って早く帰ってきた母。
「ちょっとぉ~。これは、どういうことかなぁ~。星璃ちゃん」
ひじで私をつっつく母。
「あっ、あとで話すから」
適当に母をあしらって、優馬を玄関まで見送った。
リビングに行くと、イスに座るお母さん。
「星璃。座りなさい」
いつもへらへらしているお調子者のお母さんが、すごく真面目な顔をしている。
お母さんの向かいに座った。
お母さんと顔を合わせて座って、しかも少し重い空気。
「星璃。あなた優馬くんとお付き合いしてるの?」
「うん」
返事をした。
すると、
「お母さんはねぇ。この日を夢見ていたのよ。ずっとね佐和ちゃんと、優馬くんと星璃がくっつかないかなって言ってたのよ」
佐和ちゃんとは優馬のお母さん。
うちのお母さんとは、高校時代からの親友らしい。
「あなた達が生まれた時からね、将来二人が結婚したらいいのにって言ってたのよ。やっとこの日が来たわよ。お母さん、すごく嬉しいわ」
私の目の前で大泣きする母。
しかも、このタイミングで帰宅する父。
「母さん。どうしたんだよ。」
「あなた。とうとう優馬くんと星璃が恋人になったのよ」
「それは本当か?なんでもっと早く言わないんだ。帰りにケーキ買ってきたのに。」
お父さんとお母さんが号泣している。
「ご先祖さま。とうとううちの星璃が…」
お父さんときたら、仏壇の前で手を合わせはじめた。
「星璃。お嫁に行っても父さんと母さんのこと忘れるなよぉお」
まだお嫁に行きません。
でも、反対されるよりはいいか!!

