後ろから聞こえる声はいつもの声より低くて。怖くて。

体が固まって動かなくなった。

ーバサッ

手の力が抜け、日記が床に落ちる。

「なんでここにいるの。」

「寝てたんじゃないの。」

次々ととんでくる質問。

答えようと思っても口が開かない。

「なぁ、なんで黙ってんの。」

…怖い…怖い…

体が震える。

「…っ…ひっく…」

気づいたら頬に冷たいものがつたっていた。

立っていられなくなり、その場にしゃがみ込む。

次々と溢れ出してくる涙。

なんで自分が泣いているかなんてわからない。

「…ハァ…」

ため息が聞こえる。

それから隣に誰かが来る気配を感じた。

「…ごめん。」

隣から聞こえてくるあいつの声。

「…なんでっ…なんでお前が…謝る。」

あいつに泣き顔を見られたくなくて涙を堪えてそれだけ言う。

「お前を怖がらせて…泣かせたから…。

俺が場所教えてれば、こんなとこにこなかったもんな。」

いつも通りの優しい声に戻ってわたしの背中をさすってくれるあいつ。

…この手なんか…安心する…

気持ちが落ち着き、涙も自然と止まった。

それに気づいたあいつが

「飯、食いに行くか。」

そう言って私の手を引き、黒い扉から出た。